2013年6月16日日曜日

YouTubeビデオ編集ワークフローを考える−−機材準備編−−

YouTubeに適したビデオカメラは何なのかという疑問はあるだろう。最近はビデオを撮影する機材は低価格化が進み、ハンディタイプのビデオカメラでも1万円台からあるし、スマホでも十分な画質の動画が撮影できる。またデジタル一眼レフカメラでも美しい動画が撮影できたり、選択の幅が広がっている。一方でこれまで主流だったハンディタイプのビデオカメラはだんだんと使っている場面に出会うことが減ってきている。そんな中でどれか一つ選んで使うのではなく、それぞれの違いを理解して、用途に応じて使い分けてもらいたい。

●ビデオカメラの分類

プロ用を除く市販のビデオカメラを分類してみよう。ハンディタイプ、スマートフォン、アクションカメラ、デジタル一眼レフカメラ、コンパクトデジカメの5種類に分類した表を作ってみた。

Video Camera Comarison
ビデオカメラ分類
では、それぞれについて詳しく説明していこう。

・ハンディタイプのビデオカメラ

Sony HDR-PJ630V
Sony HDR-PJ630V
SonyPanasonic, Canonなどの日本の家電メーカーが得意とするいわゆるビデオカメラ。今ではAVCHD方式でメモリやHDDに記録できるのが主流だ。特徴としては、高倍率のズームレンズが装備されているので、被写体がカメラから遠い場合にも画質を損なわずに撮影できる。最新機種では手ぶれ補正が高性能になっており、ズームしてもプロ用のステディカム(画面を安定化させるためのカメラマンが担ぐ装備)をしのぐ安定した映像が得られる。比較映像を見て欲しい。



そして忘れてはなならないのが音だ。ビデオカメラ専用機なのでステレオマイクが装備されていてきちんとした音が録れるように設計されている。また、オートフォーカス、明るさ(AE)、色温度(AWB)などのオート機能がスムーズに動作するように動画撮影に適したチューニングがなされている。ズームも電動であり、レバーひとつでスムーズに操作できるのもビデオカメラの特徴だ。そして、忘れてはいけないのがスタミナ。ビデオカメラ専用機であればバッテリー運用で1時間以上の連続撮影が可能だ。
欠点としてはYouTubeへの直接アップロードできるモデルは限られていることと、主流のAVCHDフォーマットがPCでの取り扱いに癖があるので、ちょっとしたステップを踏む必要がある。PCでのデータの取り扱い方については改めて紹介するつもりだ。

・スマートフォン

iPhoneやAndroidスマートフォンに内蔵しているカメラは性能が向上し、いつでも手軽にフルHD(1080p)動画撮影ができるのが最大の魅力だ。そしてネットに常に接続しているので、その場でYouTubeなどに直接アップロードできるのもメリットだ。iPhone動画の使い方はこの記事が参考になる。
荻窪圭のiPhoneカメラ講座:第9回 iPhone動画で気をつけるべきアレコレ
欠点としてはズームが出来ないか、できたとしても信号処理によるデジタルズームなので高倍率にズームすればするほど画質は劣化する。なので、遠景ならワイドな画角での撮影になるし、アップで撮影したい場合は被写体に近づくしかない。
また、最近のiPhone5の手ぶれ補正はかなり高性能だが、より安定した映像を撮るには以前紹介したスタンドSTEADICAM SMOOTHEEのような手持ちのスタビライザーがあると便利だ。他にもいろいろなアタッチメントが発売されているので選択の幅は広い。いずれにせよ長時間の撮影にはバッテリーの持ちが問題になるので、ワンカットずつ数秒で短くして撮影するか、長くても数分程度の撮影に適している。
Steadicam SMOOTHEE
Steadicam SMOOTHEE
加えてマイクがモノラルであり、感度が低いので遠くの音は拾いにくいし、手持ち撮影ではタッチノイズを拾いやすい。FOSTEX AR101のような外部マイクを使って高音質の収録も検討したい。
FOSTEX AR101
FOSTEX AR101
なおスマホでの基本的な持ち方で縦位置で撮影すると、YouTubeアップロードした時に左右に黒みが入って16:9画像に変換されてしまうので避けること。

・アクションカメラ(インスタントビデオカメラ)

GoPro HERO3
GoPro HERO3

新しいカテゴリのアクションカメラとは GoProに代表される超小型軽量カメラのことで、スポーツやアクションなど動きのあるシーンを撮るのに適していて、設置場所の自由度が高く、豊富なアタッチメントでサーフボードやヘルメットに装着すると面白いアングルの映像が得られる。水中で撮影できる防水ハウジングが用意されていたり、衝撃に強い構造で、乱暴な扱いにも向いている。性能はスマートフォンと似た画質で、特徴的なのはワイドアングルを基本とした固定レンズが装備されていることだ。音はそれなり、あればいいに越したことはないというレベルだ。映像フォーマットはYouTubeに親和性の高いMP4を採用しているので、撮影した映像クリップの取り扱いも簡単だ。ちょっと珍しい映像を撮りたい時のサブカメラとして使うと面白いだろう。



GoProと同じようなコンセプトのアクションカメラはSonyPanasonic, Contourからも発売されていて選択の幅は広がっている。

・デジタル一眼レフカメラ(DSLR)

EOS 5D MKIII
EOS 5D MkIII
このところ注目されているDSLR動画のきっかけを作ったのはCanon EOS 5D MkIIである。感度と画質の良さからプロにも使われるようになり、AKB48のドキュメンタリー映画が全編EOS 5D MkIIで撮影されたのをきっかけに広く知られるようになった。特徴は交換レンズの豊富さとイメージセンサーの大きさだ。APS-Cサイズやフルサイズのセンサーを使っているので非常に高感度であり暗い場面でも照明なしで撮影できる。またレンズの絞りを開ければ、被写界深度が浅くなり、背景や前景ぼけを活かした印象的な絵作りができる。基本的に古くからある一眼レフ用の交換レンズが使えるので、ワイドから高倍率ズームまで非常に多くレンズが選べて表現の幅は広い。記録される映像の傾向は、従来のビデオカメラとは異次元の画質で、映画のフィルムに近い感度特性を採用している。
ただ、静止画用途に設計されているカメラがベースなので、動画撮影では使いにくい部分も多々ある。まず第一にフォーカス合わせがとにかく難しい。撮影開始時に自動で一旦合わせたら、あとは動かないものが多い。手動でフォーカス合わせをしようとしてもピントがどこに合っているかを、ライブビューとしての液晶画面では確認することが困難だ。静止画用のズームレンズもスムーズに動かすことは想定していないレンズだから、どうしてもギクシャクしてしまうし、ズームを動かすとフォーカスがずれるレンズもある。プロが使う場合にはフォローフォーカスなどのリグを装着してそれらの操作性をカバーしている。こんなふうにマットボックスを付けるとちょっとデジカメには見えない。
Redrockmicro DSLR Cinema / Studio Rigs
例えば晴天時で絞りを開けて被写界深度を浅くしたいなら、センサーの感度が良すぎるのでNDフィルタを使って暗くすると良い。シャッタースピードが早すぎるとパラパラ漫画のようになってしまう。そして音についてもマイクの感度は低く、どうしても集音に無理があるし、レンズから発生する動作音が撮影の邪魔になることもある。
また、動画撮影時のバッテリー消費は大きく、長時間の撮影には予備のバッテリーの準備が必要だ。熱対策や記録メディアの制約として連続記録時間の制限もあるので、あらかじめ調べておくと良いだろう。
このように動画撮影用としては使いにくい面もあるが、映画にも使えるほどの高画質が、プロ用だけでなくアマチュア向けのDSLRカメラでも撮れるとあって、クリエイティブな映像制作を手軽に試してみるのもよいだろう。やはり静止画用途と同じく交換レンズのシェアが高いCanon, Nikonがよく使われている。
なおSony, Panasonicなどのミラーレス一眼カメラの動画も同じような特徴であるが、構造上の特性を活かして、動画性能を向上させた製品もある。

・コンパクトデジカメ

1.0型センサーとF1.8レンズ採用したSony DSC-RX100
このところコンパクトデジカメはすっかりスマホにシェアを奪われ、低価格化が激しいが、スマホにはない機能や高画質で差異化したり、デジカメにネット連携機能を追加したりして巻き返しを図っている。高倍率のズームがあるとか、大判センサーを使っているなどの特徴がそのまま動画撮影にも活かせる。このデジカメ、「動画も」撮れるということで、デジカメなら持っているけど、ビデオカメラがなくて困った時とか、いざというときに使える。動画も撮れるデジカメをお忘れなく。

ネット連携できるCanon PowerShot N

・まとめ

最後に動画共有サイトVimeoにVideo 101という初心者向けビデオ入門のLessonがあるので、紹介しておく。英語だが見ているだけでもある程度意味がわかるだろう。最初はビデオカメラの選び方だ。

Video 101: Choosing a Camera from Vimeo Video School on Vimeo.
その後、撮影、編集と続くので興味のある方は見ておくと良い。Vimeo Video Schoolには最近の話題としてDSLR動画のLessonなどもあるので、ご参考まで。
Vimeo Video Scool
タイプごとに特徴を説明したが、その特徴を知っていれば何を使えばいいか選ぶことができるだろう。機材準備編が長くなってしまったが、まだ少し続きがあるので次回に。

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